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に描かれたスカーリング動作では、手は「8」の字を書くように、主に横方向の運動が行われる。そして、移動方向に対して手のひらは常に迎え角のある状態で運動が行われる。したがって、スカーリング動作では、常に手の移動方向と反対方向に抗力が、そして抗力と垂直の関係で揚力が発生し、推進力は、抗力と揚力の合力となる。さらに身体にかかる推進力は、右手と左手から常に生ずる推進力の合力となるので、バランスよい状態で身体を水上に浮かすことができるのである。

4. 背泳ぎのプルパターン

図4,5および6は、3つのプルパターン(図4:ストレート・アーム・プル、図5:ストレート・バック・アーム。プル、図6:S字プル)を示す。それぞれの動きについて解説する。
(1)ストレート・アーム・プル(図4)
腕を真っ直ぐに伸ばした状態で、主に肩関節の運動で行われる。この動作は、昔の船(外輪船)の動力であるCircular paddle wheel(環状外輪)に近いといえる。プル動作の手の軌跡は、前後および縦方向の2方向となるが、移動方向に対する手の面は、常に垂直の関係にある。したがって、手から発揮される推進力は、ほとんどが抗力である。
(2)ストレート・バック・アーム・プル(図5)
このプル動作は、入水後、肩関節の運動に引き続き、肘および手首の関節運動を行いながら、水面に対して平行に真っ直ぐ後方に手を引いて行われる。この動作は、Carterpillaer paddle wheel(キャタピラー外輪)に近い。手の軌跡は主に前後の一方向で、これもストレート・アーム・プルと同様に移動方向と手の面が垂直となり、発揮される推進力は、ほぼ抗力となる。
(3)S字プル(図6)
指先の軌跡は、図のとおり、S字のようになる。入水後、手は斜め下方に向かうが、その後、主に肘関節の屈曲運動により、手は斜め上方へ、そして肘関節の伸展運動によって斜め下方へ動く。手の移動方向に対する手の面であるが、常に抑え角のある状態が保たれており、他の2泳法と比べて、推進力に揚力の占める割合が高いといえよう。赤色で指先の移動方向、その反対方向に生じる抗力が緑色で示されている。揚力が青色、そして推進力が黄色となっている。手の移動方向はS手となるが、黄色の推進力は、移動方向にほぼ向いていることがわかる。

5. 背泳ぎのプル動作中の各局面分類

上記のS字プルは、大きく4つの局面に分類することができる(図7)。
(1)第1ダウン・スウィープ(First downsweep)局面:伸ばされた手が前方に入水し、水をキャッチするために下方に移動する局面である。
(2)第1アップ・スウィープ(First upsweep)局面:キャッチを行った手が、肘関節の屈曲動作により、上方に水をとらえる局面で、この局面から推進力が発揮される。
(3)第2ダウン・スウィープ(Second downsweep)局面:肘関節の伸展動作により、下方に水を押すイメージの強い局面で、この局面においても大きな推進力を発揮する。
(4)第2アップ・スウィープ(Second upsweep)局面:第2ダウン・スウィープ局面後、手首関節の運動により、手の上方移動中に推進力を発揮する局面である。
また、Maglischo(1993)は、第2アップ・スウィープ局面後に、リリース局面として、手が水上に出る局面もプル動作に加えている。

6. アトランタオリンピック出場選手の水中映像

6−1.糸井統選手
写真1は、糸井選手の左手のエントリー(入水)から、リリース(離水)に至るまでの側方からのプル動作を示している。これは、水中の固定ビデオカメラで撮影されたものであり、コースロープと身体の、特に頭部や腰、そして指先との

 

 

 

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